早速ワインとチーズを手に

早速ワインとチーズを手に、ソファーに座る久我さんの隣に腰かけた。「いっぱい食べたけど、晩酌はやめられないよね」そして、気分良くワインのボトルに手を伸ばした私の手に、久我さんの手が重なった。「ワインもいいけど、それより先に、気持ちいいことしようか」「え?」手だけではなく、隣で私を見つめる彼と視線が重なった。一体、どこでスイッチが入ったのだろう。避孕藥副作用迷思、まるで獲物を捕らえるような目をしていた。食われる。そう感じたのは、何度目だろう。次の瞬間、私の唇はあっけない程簡単に奪われるのだ。「ん……っ」キスだけでこんなに疼いてしまうなんて、私の身体がおかしいのだろうか。けど、どうしようもないほどに感じてしまう。舌が絡まる度に、胸の奥が熱く揺さぶられる。次第に彼の手がニットの中に潜り込み、私の胸を弄び始める。「や、待って……」「もうだいぶ待ったよ。本当は帰ってきてすぐに、こうしたかったんだから」「あ……っ」久我さんは、多分知っている。

私は耳元で囁かれると、興奮してしまう。だから彼は敢えて、私の耳にキスをしながら色気のある声で囁くのだ。「待って、お風呂に入ってないから……」慣れない料理をしたせいか、普段の仕事のときよりも汗をかいてしまった気がする。さすがにこのまま抱かれるのは嫌で小さな抵抗を見せていると、テーブルに置いていた私のスマホが鳴った。画面には、青柳の名前がハッキリと見えている。

「青柳からだ」「電話、出たら?」「……うん」彼の手の動きが止まり、私のニットの中に潜り込んでいた手がすっと離れていった。待って、なんて言っていたくせに、いざ離れると物足りなく感じてしまう。……私、面倒くさい女だ。「もしもし。何?」「あ、電話出た。桜崎、今大丈夫?」「大丈夫だから電話出てるんでしょ。どうしたの?何かあった?」「いや、来週の同期会のことなんだけどさ」何の話かと思ったら、来週の末に予定している同期の飲み会のことだった。普段は依織と甲斐、青柳に私の四人で行きつけの居酒屋で飲むけれど、来週は他にも何人か参加する予定だ。「俺、幹事だろ?店、どこにするか悩んでるんだよ。桜崎と相談して決めようと思って」「店なんていつもの所でいいじゃない。ていうか、私じゃなくて甲斐に相談すれば?甲斐の方が店詳しいと思うけど」「俺もそう思ったんだけど、アイツ電話出ないんだよ」きっと甲斐は今頃依織とイチャイチャしているのだろう。結局、わざわざ今話さなくてもいいようなことで時間を取られ、電話を切った。私が青柳と話している間、久我さんは席を立っていたけれど、すぐに戻り私の隣に座っていた。「ごめん、青柳からだった。大した話じゃなかったんだけど」「そう。じゃあ、もういい?」「え……」「先にお風呂、入ってきていいよ。タオルとか用意しておいたから」電話中、席を立って何かしている気配は感じていたけれど、タオルを用意してくれていたんだ。とりあえず、お風呂に入れるなら嬉しい。私は久我さんのお言葉に甘え、バスルームに向かった。服と下着を脱ぎ、まずはシャワーで汗を流す。久我さんの家のシャワーの圧は、強すぎず弱すぎず、ちょうど良くて好きだ。ボディソープをスポンジで泡立て体を洗っていると、突然バスルームの扉が開いた。何事かと思い後ろを振り向くと、そこには裸の久我さんがいて、至って普通の感じで入ってきた。「ちょっ、何してんの?」「何って、僕もシャワーで汗流そうと思って」「それはわかるけど、何で今なのよ……私の後に入るんじゃなかったの?」「一緒に入った方が早いだろ。背中、洗ってあげるよ」「……」久我さんは私の手からスポンジを抜き取り、私の背中を優しく洗い始めた。